配偶者居住権について

自筆証書遺言の様式緩和に始まり、令和1年7月から改正相続法が一部施行されています。

今回の改正の中で個人的に特に注目する点が、「配偶者居住権」の新設です。

司法書士としても、新たに登記ができる権利が法定されたという意味で要注目なのですが、先日とある会合で、「配偶者居住権」とは、物権的なのか債権的なのかという話が少しありました。
「配偶者短期居住権」は、使用貸借類似の法定債権、「配偶者居住権」は賃借権類似の法定債権として把握されるとのことなので、それぞれ使用貸借、賃貸借の規定が準用され、債権的であることは間違いないのでしょうが、気になるのが「配偶者居住権」者の第三者との権利関係です。

「配偶者居住権」を第三者に対抗するには登記が必要とされ、新法1031条1項にて所有者が生存配偶者に対し、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負うと規定されたことから、賃借権の設定とは異なり所有者の登記義務は明確になりました。物権であれば当然に生じる登記請求権が実体法であえて法定されたことは、「配偶者居住権」の債権的な側面の一つといえるでしょう。

ただ、登記を対抗要件としたことで、せっかく設定された「配偶者居住権」が、登記の前後によって他の用益権や担保権に劣後する可能性が生じます。
生存配偶者の居住の権利の保護を図る方策としての、長期の居住権である「配偶者居住権」ですが、財産権として権利保全のための登記が必要という点は、他の物権と同じ扱いということになります。

①建物の相続による所有権移転登記、②配偶者居住権設定登記、とスムーズに登記ができればよいですが、②に手間取ると新たな紛争の火種にもなりかねません。
改正法の中間試案では、設定行為のみで第三者に対抗することができるとした段階もあったようですが、生存配偶者の居住権の保護を図る目的ならば、借地借家法上の建物賃借権の対抗要件類似の方策が別途必要になってくるのではないかという気がします。

来年4月からの施行となりますが、司法書士として相談を受けた際には、しっかり登記まで確保できるよう法的なサポートを準備しておかなければと思います。

PAGE TOP